地球温暖化のせいか、京都市内で雪が積もることが少なくなりました。まる1日、雪が降り続くなんて、一冬に数日もありません。
この作品の金閣寺(正式名は、鹿苑寺[ろくおんじ])を撮影したときは、珍しくまる2日間、雪が降り続いた日でした。どこに撮影に行こうかと考えたとき、「そうだ、金閣寺、行こう!」とひらめいたのです。なぜなら、京都市内もタイヤチェーンが必要なほどの積雪で、交通機関が麻痺していたので、遠くにはいけなかったのです。
タイヤチェーンを装着した京都市バスで、何とか金閣寺にたどりついたら観光客もまばらでした。
鏡湖池が全面凍ったのを見たのは、これが最初で最後です。
雪が降り続いていたので、まともな写真はとれません。あきらめて、帰ろうかと灰色の空を見上げたら、先ほどよりも、少し明るいように感じました。写真を撮っていると、明るさには敏感になるのです。
空を見続けていると、雲が薄れて太陽が白い丸のように見えました。
よしっ!チャンス
足元が凍ってツルツルすべるので、柵に抱きつくようにしてカメラを固定して「その時」を待ちました。
直後に、一筋の光線が金閣寺だけを照らしたのです。私は、夢中でシャッターを押していたので、定かではありませんが、わずか数十秒のことだったと思います。
私の後ろで、「ウォ~~」というどよめきに続いて、大きな拍手が起きました。振り返ると、そこには米国人(だと思う)の団体がいて、すごいものを見てしまったという顔をしていました。
その数十秒が過ぎると、空はまた暗い灰色になり翌朝まで雪が降り続きました。