福井県小浜市各地に残る火祭り、松上げ
過去に愛宕信仰の火祭り松上げを数カ所ご紹介してきましたが、今回は福井県小浜市の松上げを初めてご紹介します。
松上げという火祭りを知っている人は少ないのです。
福井県や小浜市の観光協会のホームページにも、場所や日程を紹介しているわけでもありません。
なんとか調べてわかった限りですが、下の地図が小浜市の松上げ実施場所です。
この地図の、中井滝谷地区、西相生地区、和多田地区、下田(しもた)地区が現地の方にお聴きしてわかった現在の実施地区です。
下田地区の隣(地図左)の上田(うえた)地区でも松上げがあったようですが、現在行われているのか現地の方もはっきりしないようでした。
小浜市の観光協会に2016年の松上げ開催日程を問い合わせたところ、2016年8月20日(土)に全て終わったはずとのことでした。
問い合わせたのが8月22日でしたので、がっかりしました。
念のため小浜市役所にも問い合わせたところ、和多田地区だけ27日(土)に開催されるとの嬉しい情報を得ました。
そして行ってきました。
場所がわからない
8月27日(土)の午前中、小浜市和多田地区に向かったのですが、松上げの気配もありません。
松上げは、どこの場所でも河原で行われるため、橋を見つけると橋の上から場所を探しました。
何本目かの橋を見つけました。
橋の渡り口に何やらオブジェがあり、よく見ると松上げのように見えました。
ひょっとしてと車を降りて、河原を見ると、丸い柱が三本立っています。
これまでの経験から、ここだと確信しました。
松上げの気配どころか、人の気配もありません。
橋を渡ったところに数十軒の村があるのですが、全く人の姿がありません。
しばらく橋のところで待っていると、一台の車が村から出てきたので、停まっていただき質問しました。
「今日、この場所で、松上げはありますか?」
応えは、「ありますよ。午後から準備が始まります」
初めて、安堵しました。
大小二本の柱が立てられる
橋のオブジェに二本の松明が立っているように、ここ和多田は二本の松明が立つとのことでした。
午後、再度現地に到着した時には、橋の左側(村に向かって)には、すでに小さい松明(モジと呼びます)は完成して立ち上がっていました。
他の場所の松上げは、クレーン車で立ち上げるのですが、ここ和多田はどうするのかなと見ていたら、軽自動車の荷台に取り付けたウインチで立ち上げました。
前年までは人力だったとのことで、今年初めてウインチを使用したとのことでした。
この大きな松明(モジ)の先端には大傘(おおがさ)が設けられていますが、他の場所の松上げと異なるのは、大傘が金属でできており、その中に枯れ草が詰め込まれていることでした。
作業していた方に理由をお聞きしたところ、村人が高齢化して大傘を手作業で作ることが難しくなったからということで、金属の傘であれば、毎年簡単に使用できるということでした。
松上げの開始
夕刻が近づくと、祭りの準備も忙しくなりました。
橋につながる道路には、灯篭(とうろう)が並びました。
橋の上では、村人たちがシートを敷いて宴会です。
村人以外の存在は、私を含めて4名の写真家だけ。
大きな祭り、有名な祭りより、このような祭りが大好きです。
大きな松明の撮影準備(場所を決めて三脚を立てたり)していると、小さな松明で松上げが始まってしまいました。
どうせ簡単には火がつかないとたかをくくって、小松明の場所に移動したのですが、なんとあっという間に火が点いてしまったのです。
これは私の大失敗。
火が点いた後の写真しか撮れませんでした。
気をとりなおして、、大松明の撮影に集中しました。
1メートルのほどのヒモの先に焚き木が結ばれている「放り上げ松」に火をつけ、くるくると回して投げ上げます。
20メートル上にある大傘に着火するまで続けます。
大松明で松上げが始まったのは午後7時でした。
2台のカメラで撮影しました。
ついに着火したのは7時35分過ぎでした。
意外に早く着火しました。
一般的に松上げは、最後に柱を倒して終わるのですが、ここ和多田は倒すことはありませんでした。
余談_和多田の住宅には屋号がある
松上げの場所を探している時、和多田の住宅案内板を見つけました。
そこに、松上げの場所が描いてあるかもと期待したのです。
残念ながら、描いてありませんでした。
(下の画像には、私が描き加えました)
ふと住宅の名前を見たところ、ひらがなで読みが書いてある、と思ったのですが、よく見ると読みではない。
数十軒の住宅は、木崎さん、大江さん、芝さんがほとんど。
ひらがなは「ちょうざえもん」、「ちょうざいんきょ」、「きよもん」、「ぜんべ」、「ぜんべいんきょ」など、漢字の名前と全く一致しません。
松上げの準備をしていたご老人に理由を聞いたところ、これは屋号だとのこと。
同じ姓が多いので、お互いを呼び合う時は、屋号を使うのだそうです。
他の場所の松上げの過去ブログ
他の場所の松上げの過去ブログは、こちらです(ご参考にご覧下さい)
美山_盛郷の上げ松
http://kono1.jp/festival/festival12194
松上げ総集編_愛宕山登山
http://kono1.jp/festival/festival12402